狂言で「通圓」という演目があります。
これは能がかりの狂言で初代通圓の物語です。
諸国一見の僧が宇治橋にさしかかると、
橋のたもとの茶店に一碗の茶が手向けられています。
訳をたずねると、「あれはいにしへ、通圓と申す茶坊主の候らいしが、
宇治橋供養の時、終に茶を点て死せられし候」
今日はその命日なので、ゆかりの人が手向けたのだろうと語ります。
すると茶碗と茶筅を持ち柄杓を腰にさした通圓の霊が現れ、
茶を点て死した最後を物語って消える |

当店に祀られている一休襌氏作
初代通圓の像
狂言「通圓」と同じポーズをしています |
というのが狂言「通圓」のあらすじです。
これはお能の「頼政」のパロディ版で
一般の狂言では見ているだけで面白いのですが
お能の「頼政」を知っていなければ面白くない狂言なのです。
「頼政」は宇治橋での戦いで平家軍の軍勢が300人と押し寄せ、
弓矢と刀で平家軍に立ち向かってゆきますが刀も折れ、
矢も尽きてとうとう戦えなくなって平等院の境内で討ち死するという物語です。
「通圓」は宇治橋の供養のさなか、
通圓の茶を飲もうと道行く人300人がどっと押し寄せてきます。
通圓は茶を点て続けに点てますが、茶筅もすり減り、
お茶もなくなり茶碗も割れ柄杓も折れて、
お茶が点てられなくなって点て死するという物語です。
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面:狂言「通圓」
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「通圓」は「水のさかまく所をば、砂ありと知るべし。
よわき者には柄杓を持たせ、
強気には水を担わせよ。流れん者には茶筅を持たせ、
互いに力を合はすべし」と演じますが
「頼政」では「水の逆巻く所をば岩ありと知るべし
弱き馬をば下手に立てて、
強きに水を防がせよ。流れん武者には弓筈を取らせて、
互いに力を合はすべし」と演じます。
ここを先途と茶を点てた通圓も
「茶のみ〔頼み〕」とする茶碗・柄杓を打ち割られて、
平等院の縁の下の砂の上に団扇を敷き、
茶筅を持ちながら一首を詠んで最期を遂げます。
茶の点て死することは設定からして
奇想天外なのですが普通の狂言と違い
能仕立で重々しく演じるので「頼政」の舞台を熟知している人には
おかしくてたまらない狂言です。
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面:能「頼政」
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